高齢のプレイヤーに向けたゲームデザイン:見やすく寛容に
視覚、タッチ操作、反応時間は年齢とともにどう変わるのか。コントラスト、ボタン、ペースへの影響と、80歳でも遊びやすいゲームのデザイン原則をまとめました。

以前、年長のプレイヤーがよいパズルゲームを選ぶ方法について書きました。この記事は画面の反対側にいる人、つまり70代や80代の人にも遊べるゲームをつくりたいデザイナーや開発者のためのものです。年齢とともに視覚、動き、速さがどう変わるかについての研究をもとに、それを少数の原則にまとめます。どれも風変わりなものではありません。ほとんどは誰にとってもゲームをよくするもので、それこそが実践するいちばんの理由です。
加齢と視覚についての25年分の研究をまとめたCynthia Owsleyのレビューは、年長の目には文字を大きくすればいいだけだ、という考えを正すのに役立ちます。彼女が挙げる変化には、次のようなものがあります。コントラスト感度が落ちて、白地の薄いグレーや黒地の濃い青が見分けにくくなること。暗いところでの見え方が悪くなること。まぶしさからの回復が遅くなること。ちらつきや動きへの感度が下がること。そして視覚の処理が遅くなり、画面の内容を把握するのに時間がかかるようになることです。
どの変化にも、デザイン上の意味があります。コントラスト感度の低下は、大きな文字だけでなく、文字と背景のあいだ、ゲームのピースとステージのあいだに強いコントラストが必要だということです。暗いところでの見え方の低下は、ダークテーマや暗い配色がよく使われる、ベッドや夜のソファで遊ぶゲームで問題になります。処理の遅れは、一瞬だけ表示される情報や、すばやく変わる情報に反対する理由になります。インターフェイスデザイナー向けに加齢についてまとめたHawthornのレビューは、もう四半世紀前のものですが、同じ結論の多くを導いていて、今でもよいチェックリストです。
色の見え方も変わります。目の水晶体は年齢とともに黄色くなり、とくに青と紫が見分けにくくなります。これは先天性の色覚障害の赤緑の取り違えとは違うパターンです。2つの青のわずかな違いに頼っているゲームは、チームの誰も気づかないうちに、年長のプレイヤーにとって遊べないものになってしまうことがあります。色のついたすべてのピースに記号があるとなぜ両方に役立つのかは、色覚障害とゲームの記事で説明しています。
出典1Owsley, C. (2011). Aging and vision. Vision Research, 51(13), 1610–1622.2Hawthorn, D. (2000). Possible implications of aging for interface designers. Interacting with Computers, 12(5), 507–528.
Seidlerらによる運動制御と加齢についてのレビューは、動きが遅くなること、協調性が下がること、細かい運動制御のばらつきが大きくなることを挙げ、それらを脳の運動系の変化と結びつけています。多くの人では、さらに手のふるえや関節炎が加わります。タッチスクリーンでは、それが押し損ねや意図しないタッチの増加、正確さや速さを求めるジェスチャーの難しさとして現れます。
それでもタッチスクリーンは年長のユーザーに向いています。Findlaterらは、年長と若い大人を対象に、マウスとタッチスクリーンでのポインティング、ドラッグなどの課題を比較しました。年長の大人は全体として遅かったものの、タッチスクリーンではその差が縮まりました。マウスと比べて、年長の大人の動作時間は35%短くなり、若い大人では16%でした。エラーも減りました。Motti、Vigouroux、Gorceは、65歳から86歳の24人を対象に、タッチ式のパズルゲームでのドラッグ&ドロップを検証し、スマートフォンでも効率のよい操作方法であることを見いだしましたが、スタイラスを使うと正確さが上がりました。教訓は、タッチを避けることではなく、ボタンをたっぷり大きくすることです。
出典3Seidler, R. D., Bernard, J. A., Burutolu, T. B., Fling, B. W., Gordon, M. T., Gwin, J. T., Kwak, Y., & Lipps, D. B. (2010). Motor control and aging: Links to age-related brain structural, functional, and biochemical effects. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 34(5), 721–733.4Findlater, L., Froehlich, J. E., Fattal, K., Wobbrock, J. O., & Dastyar, T. (2013). Age-related differences in performance with touchscreens compared to traditional mouse input. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 343–346). ACM.5Motti, L. G., Vigouroux, N., & Gorce, P. (2014). Drag-and-drop for older adults using touchscreen devices: Effects of screen sizes and interaction techniques on accuracy. In Proceedings of the 26th Conference on l’Interaction Homme-Machine (pp. 139–146). ACM.
「シニア向けのかんたんモード」をつくりたくなるものです。研究によれば、それは間違いでしょう。FindlaterとZhangは700人以上から入力データを集め、そのうち18歳から83歳の318人を分析しました。平均すると成績は年齢とともに着実に下がっていましたが、個人差がとても大きく、年齢を知っていても、あるいは運動障害があると本人が報告しているかどうかを知っていても、その人が実際にどう操作するかはほとんどわかりませんでした。Mottiの研究では、80歳を超える参加者の中に、70代の人より成績のよい人もいました。
だからこそ、幅に向けてデザインしましょう。一人ひとりが調整できる設定を組みこみ、プレイヤーがすでに選んでいるシステムの設定を尊重し、ほとんどの人が変える必要がないくらいゆとりのある初期設定にします。それが反対側からどう見えるかは、シニア向けのプレイヤー用チェックリストで紹介しています。
出典6Findlater, L., & Zhang, L. (2020). Input accessibility: A large dataset and summary analysis of age, motor ability and input performance. In Proceedings of the 22nd International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–6). ACM.5Motti, L. G., Vigouroux, N., & Gorce, P. (2014). Drag-and-drop for older adults using touchscreen devices: Effects of screen sizes and interaction techniques on accuracy. In Proceedings of the 26th Conference on l’Interaction Homme-Machine (pp. 139–146). ACM.
まとめると、研究は5つの原則を指し示しています。これらは、Webのアクセシビリティ基準にあるターゲットサイズのガイドライン(英語)とも、私たちがパズルゲームをつくるなかで気づいたこととも重なります。
いちばん役立つテストは、いちばん安上がりなテストでもあります。70代や80代の人に何人かゲームを渡して、手を貸さずに遊ぶ様子を見るのです。迷ったり、目を細めたり、2回タップしたり、これは何かと尋ねたりしたところでは、デザインがその人たちを置き去りにしています。そしてたいていは、もっと目立たないかたちで、若いプレイヤーの多くも置き去りにしています。誰かにブラウザのステージを渡せば、私たちのゲームでも同じテストができます。
- 読みやすい:どこでもコントラストが高く、システムの文字サイズに合わせて大きくなるはっきりしたサンセリフ体を使い、大切なことを細い、薄い、小さい文字で書かない。
- 押しやすい:あいだに余白のある大きなボタンを、親指の届くところに置き、ジェスチャーは指1本で、速さを求めない。
- 寛容:アンドゥがしやすく、何かを消費する前には確認があり、うっかりしたタッチにペナルティがない。
- 急かさない:ふだんのプレイにタイマーがなく、一瞬で消える情報がなく、いつでも何も失わずにやめられる。
- 予測できる:レイアウトと操作が一貫していて、突然のポップアップがなく、新しいギミックは1つずつ登場する。
出典1Owsley, C. (2011). Aging and vision. Vision Research, 51(13), 1610–1622.4Findlater, L., Froehlich, J. E., Fattal, K., Wobbrock, J. O., & Dastyar, T. (2013). Age-related differences in performance with touchscreens compared to traditional mouse input. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 343–346). ACM.2Hawthorn, D. (2000). Possible implications of aging for interface designers. Interacting with Computers, 12(5), 507–528.
これらの原則を私たちがどう生かそうとしてきたか、そしてどこに限界があるかを紹介します。どのブロックも、色、形、スタッド(ポッチ)でそれぞれを見分けられるようにしていて、色覚サポートのマークが最初からオンになっています。これは、年齢とともに増える青と紫の取り違えにも役立ちます。「さらに大きな文字」はすべての画面に反映され、「視差効果を減らす」にもあらゆる場所で対応しています。時間制限は一切ありません。どのステージも最初の一手の前に手数の上限を表示し、各ステージ最初のアンドゥは無料です。木箱、氷、錠前、コケ、カウント付きゲートが登場するのは、基本に慣れたあとの、後半のステージだけです。進行状況はiCloudで同期されるので、iPhoneで遊んだところからiPadの大きな画面で続けられます。
すべてを解決できたわけではありません。ブロックのスライドは方向のあるジェスチャーで、タップより難しく感じるプレイヤーもいるでしょう。だからこそアクセシビリティのページでは、操作が届きにくいときや読みにくいときに、具体的な情報を教えていただくようお願いしています。運動障害のあるプレイヤーという関連するケースについては、片手で遊べるiPhoneゲームをご覧ください。
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よくある質問
役に立つ答えをいくつか
高齢者向けのゲームはどうデザインすべきですか?
高いコントラストと大きさを変えられる文字、大きく余白のあるタッチターゲット、しやすいアンドゥ、ふだんのプレイにタイマーがないこと、そして一貫した予測できるレイアウトです。こうした変更のほとんどは、すべてのプレイヤーの役に立ちます。
タッチスクリーンは高齢者に向いていますか?
おおむね向いています。ある研究では、タッチスクリーンによって年長の大人の動作時間がマウスと比べて35%短くなり、若いユーザーとの差が縮まりました。ただし、小さなボタンや正確なジェスチャーでは、依然としてエラーが多くなります。
年長のプレイヤーにとって、文字の大きさよりコントラストが大切なのはなぜですか?
加齢によってコントラスト感度と暗いところでの見え方が落ちるため、薄い文字やコントラストの低い文字は、大きくしても読みにくいままです。強いコントラストと大きな文字を組み合わせるのがいちばんです。
ゲームにはシニア向けの特別なモードが必要ですか?
入力操作の研究では、年齢は個人の能力をあまり予測しないことがわかっています。年齢についての思いこみにもとづく別モードより、ゆとりのある初期設定と調整できる設定のほうが、年長のプレイヤーの役に立ちます。
APA 7
参考文献
参考文献は原語のまま記載しています。出典が研究ではなく、スタジオ自身の歴史や報道記事である場合は、本文の該当箇所でその旨を明記しています。
- Owsley, C. (2011). Aging and vision. Vision Research, 51(13), 1610–1622. doi.org/10.1016/j.visres.2010.10.020(新しいタブで開きます)
- Hawthorn, D. (2000). Possible implications of aging for interface designers. Interacting with Computers, 12(5), 507–528. doi.org/10.1016/s0953-5438(99)00021-1(新しいタブで開きます)
- Seidler, R. D., Bernard, J. A., Burutolu, T. B., Fling, B. W., Gordon, M. T., Gwin, J. T., Kwak, Y., & Lipps, D. B. (2010). Motor control and aging: Links to age-related brain structural, functional, and biochemical effects. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 34(5), 721–733. doi.org/10.1016/j.neubiorev.2009.10.005(新しいタブで開きます)
- Findlater, L., Froehlich, J. E., Fattal, K., Wobbrock, J. O., & Dastyar, T. (2013). Age-related differences in performance with touchscreens compared to traditional mouse input. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 343–346). ACM. doi.org/10.1145/2470654.2470703(新しいタブで開きます)
- Motti, L. G., Vigouroux, N., & Gorce, P. (2014). Drag-and-drop for older adults using touchscreen devices: Effects of screen sizes and interaction techniques on accuracy. In Proceedings of the 26th Conference on l’Interaction Homme-Machine (pp. 139–146). ACM. doi.org/10.1145/2670444.2670460(新しいタブで開きます)
- Findlater, L., & Zhang, L. (2020). Input accessibility: A large dataset and summary analysis of age, motor ability and input performance. In Proceedings of the 22nd International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–6). ACM. doi.org/10.1145/3373625.3417031(新しいタブで開きます)



