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インクルーシブデザイン

感覚にやさしいゲーム:ニューロダイバースな人への配慮

自閉スペクトラムやニューロダイバージェントのプレイヤーの多くは、音、光、驚きに敏感です。研究の知見と、予測できて静かでプレッシャーの少ないデザインを紹介。

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レベル520の超難しいOutBrickのステージを映したスマートフォンの両側にMossとPoppy。近くにはターコイズ、緑、青のブロックが浮かんでいます
ジャーナルのイラスト

多くの自閉スペクトラムの人にとって、そして感覚の受け取り方が違うほかの多くの人にとって、今どきのゲームは刺激が多すぎます。個別に音量を下げられない音楽、突然の効果音、点滅するお祝いの演出、考えている途中に届く通知、予告なく変わるメニュー。どれも誰かを締め出すためにつくられたわけではありませんが、どれもそうなりえます。この記事では、感覚の違いとゲームについて研究がわかっていること、そしてゲームを退屈にすることなく、予測でき、静かで、プレッシャーの少ないものにするデザインの工夫を紹介します。

感覚の違いはよくあり、しかも多様

Ben-Sassonらは2019年、自閉スペクトラム症の感覚症状についてのメタ分析を更新し、4,600人以上の自閉スペクトラムの人を対象にした55件の質問紙研究をまとめました。定型発達の同年代と比べて、自閉スペクトラムの人は、過敏さ(音や光、手ざわりに圧倒される)、鈍感さ(ある種の感覚に気づかない)、感覚を求める行動を、ずっと多く報告していました。差は大きなものでしたが、結果は研究によっても人によってもかなりばらついていて、自閉スペクトラムの感覚のあり方がひとつではないことを思い出させてくれます。

感覚の敏感さは、診断のある人だけのものではありません。RobertsonとSimmonsは一般の大人212人を調査し、本人が報告する自閉スペクトラム的な特性の数と、感覚処理の困りごとを経験する頻度とのあいだに強い結びつきがあることを見いだしました。つまり、感覚の心地よさに向けたデザインは、一部の人だけの関心事ではありません。片頭痛や不安のある人、あるいは長い一日の終わりにただ疲れている人を含め、幅広いプレイヤーの助けになります。

出典1Ben-Sasson, A., Gal, E., Fluss, R., Katz-Zetler, N., & Cermak, S. A. (2019). Update of a meta-analysis of sensory symptoms in ASD: A new decade of research. Journal of Autism and Developmental Disorders, 49(12), 4974–4996.2Robertson, A. E., & Simmons, D. R. (2013). The relationship between sensory sensitivity and autistic traits in the general population. Journal of Autism and Developmental Disorders, 43(4), 775–784.

言葉づかいについて

ここでは言葉が大切で、ただひとつの答えはありません。Kennyらは、英国の自閉症コミュニティの3,400人以上に、どの言葉を好むかを尋ねました。「autism(自閉症)」と「on the autism spectrum(自閉スペクトラムにある)」は広く受け入れられていました。「autistic(自閉的な人)」は多くの自閉症の大人と家族に支持されましたが、専門家からの支持は少なく、一方で「person with autism(自閉症のある人)」は、自閉症の大人より専門家のあいだで好まれていました。誰もが好む言葉はありませんでした。この記事では、英語で多くの自閉症の大人が好む言い方にならい、主に「自閉スペクトラムの人」と書き、より広いグループには「ニューロダイバージェント」を使いますが、人によって選ぶ言葉が違うことも承知しています。

医学的な枠組みも避けています。感覚の違いは、一部の人が世界を体験するあり方の一部であり、ゲームが直そうとすべきものではありません。英国自閉症協会(National Autistic Society)の感覚の違いについてのガイド(英語)は、わかりやすい言葉で書かれたよい入門です。

出典3Kenny, L., Hattersley, C., Molins, B., Buckley, C., Povey, C., & Pellicano, E. (2016). Which terms should be used to describe autism? Perspectives from the UK autism community. Autism, 20(4), 442–462.

自閉スペクトラムのプレイヤーとの研究が示すこと

自閉症とビデオゲームについての初期の研究の多くは、リスクに注目していました。Mazurek、Engelhardt、Clarkが自閉スペクトラムの大人に直接尋ねると、より豊かな姿が見えてきました。多くの参加者にとってゲームは生活の大切で楽しい一部で、娯楽、リラックス、ストレス解消、そして人とのつながりのために大切にされていました。遊ぶ時間についての心配もいくらかありました。Ringlandは、自閉スペクトラムの子どものためにつくられたMinecraftのコミュニティをエスノグラフィーで研究し、丁寧に運営された仮想世界が、子どもたちに仲間と遊べる居心地のよい場所を与えうることを示し、そうした場所は遊び場に劣らず現実のものだと論じました。

SpielとGerlingは、ニューロダイバージェントのプレイヤー向けのゲームについての研究論文66本をレビューし、この分野に批判的な見方を示しました。ほとんどのゲームは子ども向けで、上から一方的にデザインされ、教育や療育を目的とし、ニューロダイバージェントのプレイヤー自身が楽しむものではなく、障害の医学モデルにもとづいてつくられていました。その結論は、どんなデザイナーにとってもよい指針です。ニューロダイバージェントの人を変えようとするゲームではなく、本人たちが遊びたいと思うゲームをつくり、主導権を渡すことです。

それは、多くの自閉スペクトラムのプレイヤーが大切にしている遊びの社会的な面と、それにともなうプレッシャーの両方を真剣に受け止めることでもあります。対戦モード、公開ランキング、知らない人とのチャットは、合うプレイヤーもいれば圧倒されるプレイヤーもいます。ゲームはそれらを押しつけずに用意できます。そうすれば、静かに一人でパズルを解きたいプレイヤーが、そこにたどり着くまでに人づきあいのうながしをかき分けて進む必要はありません。

出典4Mazurek, M. O., Engelhardt, C. R., & Clark, K. E. (2015). Video games from the perspective of adults with autism spectrum disorder. Computers in Human Behavior, 51, 122–130.5Ringland, K. E. (2019). A place to play: The (dis)abled embodied experience for autistic children in online spaces. In Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1–14). ACM.6Spiel, K., & Gerling, K. (2021). The purpose of play: How HCI games research fails neurodivergent populations. ACM Transactions on Computer-Human Interaction, 28(2), 1–40.

感覚にやさしいデザインとは

共通するのは、自分で調整できることです。どの感覚がつらいかは人によって違うので、目指すべきはひとつの「静かモード」ではなく、それぞれの経路を上げたり、下げたり、オフにしたりできること、そして毎回同じようにふるまうゲームです。

ゲームはしばしば驚きを売りにしているので、予測できることにはとくに気を配る価値があります。突然の出来事は、あるプレイヤーには楽しく、別のプレイヤーにはつらいものです。答えは新しさをすべて取り除くことではなく、それを予告することです。新しいギミックが来ることを伝え、前もって見られるようにし、一度覚えた世界のルールは変えないことです。決まった習慣はそれ自体が楽しみになりえます。毎日同じ時間に同じかたちで届く今日のボードの魅力も、そこにあります。

  • 音楽、効果音、触覚フィードバックを別々に調整でき、それぞれ完全にオフにできる。
  • システムの「視差効果を減らす」の設定に対応し、画面の広い範囲を点滅させない。
  • 予測できるフィードバック:同じ操作をすれば、いつも同じ音、アニメーション、結果になる。
  • 驚かせない:プレイ中にポップアップを出さず、突然大きな音を鳴らさず、新しいものが現れる前に予告する。
  • いつでも何も失わずに一時停止したりやめたりでき、プレイヤーを急かす時間制限がない。
  • はっきりした文字どおりの説明を、あとからでも見つけられる。メニューは一貫していて、勝手に並び替わらない。
  • 報酬やお祝いの演出は短く、控えめにできる。

出典1Ben-Sasson, A., Gal, E., Fluss, R., Katz-Zetler, N., & Cermak, S. A. (2019). Update of a meta-analysis of sensory symptoms in ASD: A new decade of research. Journal of Autism and Developmental Disorders, 49(12), 4974–4996.6Spiel, K., & Gerling, K. (2021). The purpose of play: How HCI games research fails neurodivergent populations. ACM Transactions on Computer-Human Interaction, 28(2), 1–40.

OutBrickの立ち位置

OutBrickは特定のグループのためにデザインしたわけではありませんが、これらの原則の多くは私たちが大切にしているものです。サウンド、音楽、触覚フィードバック、通知は、それぞれ設定でオフにできます。「視差効果を減らす」にはあらゆる場所で対応し、視差効果、紙吹雪、弾むようなトランジションを抑えます。9人のブロックのなかまは声ではなく吹き出しの文字で話すので、ゲームを完全に無音にできます。時間制限はありません。どのステージも最初の一手の前に手数の上限を表示し、スライドはいつも同じようにふるまい、指を離したところで止まります。ステージを中断させるものはなく、広告はプレイヤーが見たいと思ってボタンを押したときにだけ流れるリワード動画です。

お祝いの演出やジャーニーマップなど、ゲームの一部をにぎやかすぎると感じるプレイヤーもいるかもしれません。その場合はぜひ教えてください。連絡方法はアクセシビリティのページにあります。穏やかなデザインについてはパズルゲームがリラックスできる理由と「視差効果を減らす」が大切な理由を、ゲームを置くタイミングについては遊ぶとき、休むときをご覧ください。

よくある質問

役に立つ答えをいくつか

感覚にやさしいゲームとはどんなものですか?

音楽、効果音、振動を別々に調整でき、「視差効果を減らす」に対応し、フィードバックが予測でき、突然の音やポップアップがなく、いつでも進行状況を失わずに一時停止したりやめたりできるゲームです。

ビデオゲームは自閉スペクトラムの人にとっていいものですか?

自閉スペクトラムの大人を対象にした研究では、ゲームは楽しさ、リラックス、人とのつながりの源として大切にされていることが多いとわかっています。誰にとってもそうであるように、ゲーム全般よりも、合ったゲームと健康的なバランスのほうが大切です。

音や光に敏感なプレイヤーに役立つiPhoneの設定は?

「アクセシビリティ」>「動作」の「視差効果を減らす」は、対応するアプリのアニメーションを和らげます。集中モードは遊んでいるあいだの通知を止め、システムの触覚フィードバックは「サウンドと触覚」でオフにできます。そのうえで、各ゲーム独自の音と効果の設定を確かめましょう。

OutBrickは無音で遊べますか?

はい。サウンド、音楽、触覚フィードバック、通知はそれぞれ設定でオフにでき、ブロックのなかまは吹き出しの文字だけで話すので、完全に無音で遊べます。

APA 7

参考文献

参考文献は原語のまま記載しています。出典が研究ではなく、スタジオ自身の歴史や報道記事である場合は、本文の該当箇所でその旨を明記しています。

  1. Ben-Sasson, A., Gal, E., Fluss, R., Katz-Zetler, N., & Cermak, S. A. (2019). Update of a meta-analysis of sensory symptoms in ASD: A new decade of research. Journal of Autism and Developmental Disorders, 49(12), 4974–4996. doi.org/10.1007/s10803-019-04180-0(新しいタブで開きます)
  2. Robertson, A. E., & Simmons, D. R. (2013). The relationship between sensory sensitivity and autistic traits in the general population. Journal of Autism and Developmental Disorders, 43(4), 775–784. doi.org/10.1007/s10803-012-1608-7(新しいタブで開きます)
  3. Kenny, L., Hattersley, C., Molins, B., Buckley, C., Povey, C., & Pellicano, E. (2016). Which terms should be used to describe autism? Perspectives from the UK autism community. Autism, 20(4), 442–462. doi.org/10.1177/1362361315588200(新しいタブで開きます)
  4. Mazurek, M. O., Engelhardt, C. R., & Clark, K. E. (2015). Video games from the perspective of adults with autism spectrum disorder. Computers in Human Behavior, 51, 122–130. doi.org/10.1016/j.chb.2015.04.062(新しいタブで開きます)
  5. Ringland, K. E. (2019). A place to play: The (dis)abled embodied experience for autistic children in online spaces. In Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1–14). ACM. doi.org/10.1145/3290605.3300518(新しいタブで開きます)
  6. Spiel, K., & Gerling, K. (2021). The purpose of play: How HCI games research fails neurodivergent populations. ACM Transactions on Computer-Human Interaction, 28(2), 1–40. doi.org/10.1145/3432245(新しいタブで開きます)

執筆

OutBrick Editorial Desk

OutBrick編集部は、プレイヤー研究、アクセシビリティの実践、ゲームづくりで得た学びを、役に立って読みやすいノートにまとめています。

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