ゲームフィールとジュース:気持ちいいスライドの理由
ジュースとは、タップを気持ちよくする追加のフィードバックのこと。数千人規模の研究によると、効果があるのはある程度まで。それを超えると逆効果です。

同じゲームの2つのバージョンを手に取ってみてください。片方では、ブロックがステージを横切って止まるだけ。もう片方では、ブロックがすべるように進み、ゆっくりと止まり、壁にかすかにコツンと当たり、ゲートから出ていくときに小さなほこりが舞い上がります。ルールはまったく同じ。それなのに、片方は表計算ソフトのようで、もう片方はおもちゃのように感じられます。デザイナーはこの違いを「ゲームフィール」と呼び、それを生む、なくても困らない追加のフィードバックを「ジュース」と呼びます。ゲーム開発でもっとも語られてきたアイデアのひとつでありながら、最近まではほとんど検証されていないものでもありました。今ある研究は、ゲームをつくる人に明確なメッセージを送っています。ジュースの効果は本物で、やりすぎの害もまた本物だ、ということです。
Kieran Hicks、Kathrin Gerling、Patrick Dickinson、Vero Vanden Abeeleは、すっきりした定義を示しています。ジューシーさとは冗長なフィードバックであり、プレイヤーのひとつの操作が、新しい情報を持たない複数の反応を引き起こすことだ、というものです。画面が揺れ、スコアが弾け、パーティクルが飛び、音が鳴る。何が起きたかを知るためには、どれも必要ありません。それでも、どれもが感じ方を変えています。
Martin PichlmairとMads Johansenは、ゲームフィールに関する学術と実務の200以上の文献を調べ、さらに踏み込みました。彼らはこの技術を3つの領域に分けています。「チューニング」は物理的な感覚に関わるもので、物体がどう加速し、どれくらい重く見え、どれだけ予測どおりに動くかです。「ジューシング」は増幅で、操作を力強く感じさせ、結果をはっきりさせる追加の合図です。「ストリームライニング」は支えで、たとえば少し早すぎたタップを許すなど、ゲームがプレイヤーの意図をくんで動くことです。彼らの枠組みでは、ジュースは3つの道具のひとつにすぎず、残りの2つはもっと控えめなものです。
出典1Hicks, K., Gerling, K., Dickinson, P., & Vanden Abeele, V. (2019). Juicy game design: Understanding the impact of visual embellishments on player experience. Proceedings of the Annual Symposium on Computer-Human Interaction in Play, 185–197.2Pichlmair, M., & Johansen, M. (2022). Designing game feel: A survey. IEEE Transactions on Games, 14(2), 138–152.
Hicksらは2つの研究を行いました。ひとつは40人の参加者が2つの研究用ゲームを遊ぶもの、もうひとつは32人の参加者が改造版のQuake 3 Arenaを遊ぶもので、どちらも視覚的な装飾ありとなしで比べました。追加のエフェクトは、ゲームの見た目の魅力を確実に高めました。一方、プレイヤーが自分をどれだけ有能だと感じるかへの効果は、一部の状況でしか見られませんでした。ジュースでゲームの見た目は良くなりましたが、プレイヤーが自分をうまいと感じるようになるとは限らなかったのです。
これまでで最大の研究は、Dominic Kaoによるものです。3,018人のプレイヤーに、同じアクションRPGの4つのバージョンのどれかを遊んでもらいました。ジュースなし、中、高、極端の4つです。勝ったのは真ん中の2つでした。ジュースなしと極端なバージョンはどちらも、中や高と比べて、プレイ時間が有意に短く、プレイヤー体験が悪く、内発的動機づけが低く、さらに成績まで悪くなりました。フィードバックが少なすぎるとゲームは死んだように感じられ、多すぎるとプレイヤーに必要な情報がノイズに埋もれてしまいます。
この逆U字の形こそ、この分野の研究全体でもっとも実用的な結果です。ジュースは美徳ではなく、分量の問題です。
限界もはっきりさせておきましょう。どちらの研究もアクションゲームを使っており、そこでは素早いフィードバックが楽しさの一部です。ゆっくり考えるジャンルなら「ちょうどいい」量は違ってくるでしょう。また、Kaoの4つのバージョンは尺度上の決まった点に置かれていたので、この研究が示すのは両極端が負けるということであって、個々のゲームにとって最適な量がどこにあるかではありません。パズルゲームについて正直にまとめるなら、結果の方向性はおそらく当てはまるものの、正確な量はプレイヤーとのテストで見つけるしかない、ということになります。
出典1Hicks, K., Gerling, K., Dickinson, P., & Vanden Abeele, V. (2019). Juicy game design: Understanding the impact of visual embellishments on player experience. Proceedings of the Annual Symposium on Computer-Human Interaction in Play, 185–197.3Kao, D. (2020). The effects of juiciness in an action RPG. Entertainment Computing, 34, 100359.
スマホでは、手ざわりは見た目だけではありません。Tanay SinghalとOliver Schneiderはジュースの考え方を振動に応用し、画面がすでに見せていることを補強する振動を「ハプティックの装飾」と定義しました。参加者が自分のスマホを使った2つの研究で、ジューシーなハプティクスは、ゲームの楽しさ、魅力、没入感、意味深さの感じ方を高めました。タイミングのいい親指の下の小さな振動は、画面の揺れが担う役割の一部を、見るものを何も増やさずに果たせるのです。
その反対側にあるのが、まったく反応しない装飾です。Anna-Lena Meinersらはこれを「ラッシュネス(豊かさ)」と呼びます。背景の細部や、触れても何も起きないオブジェクトのことです。31人の参加者がプラットフォーマーの4つのバージョンを遊んだ研究では、ラッシュネスが増えるほどゲームの見た目の魅力は高まりましたが、プレイヤーが感じる有能さや、報告された頭の負担は変わりませんでした。装飾は心地よいものです。でも、それは手ざわりではありません。
強さと同じくらい大切なのが一貫性です。Appleのハプティクスの再生に関するヒューマンインターフェイスガイドラインは、開発者にハプティクスを一貫して使い、それぞれの振動とそれを引き起こす操作とのあいだに、はっきりした因果関係をつくるよう求めています。これはフィードバックのどの経路にも当てはまります。プレイヤーが予測できる反応は、ゲームを理解する手がかりの一部になります。でたらめに変わる反応は、ただのノイズです。
出典4Singhal, T., & Schneider, O. (2021). Juicy haptic design: Vibrotactile embellishments can improve player experience in games. Proceedings of the 2021 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, 1–11.5Meiners, A.-L., Reich, D., Hicks, K., Alexandrovsky, D., & Gerling, K. (2025). Lushness in game design: The role of non-interactive visual embellishments in player experience. Proceedings of the 20th International Conference on the Foundations of Digital Games, 1–11.
ジュースについて書かれたものの多くはアクションゲームの話で、そこではたいてい、エネルギーが多いことこそが大事です。落ち着いたパズルゲームの役目は違います。フィードバックは、プレイヤーの鼓動を速めずに何が起きたかを伝えなければならず、最初のステージでも100番目のステージでも読みやすくなければなりません。そのため、バランスはチューニングとストリームライニングのほうに傾き、ジュースはそれにふさわしい瞬間のために控えめに使うことになります。
パズルのフィードバックを評価するとき、私たちが使っているルールをいくつか紹介します。
- 動きでルールを説明する。ゆっくり止まるブロックは、そこに何かがあったから止まったのだと教えてくれる。
- いちばん大きなエフェクトは、いちばんまれな出来事のためにとっておく。クリアは一手よりも大きな演出に値する。
- 次に読む必要があるステージの部分を、エフェクトで決して隠さない。
- システムの「視差効果を減らす」設定を尊重し、演出がなくてもゲームが読みとれるようにする。
- 1回目は楽しくても50回目には疲れるエフェクトなら、それはやりすぎ。
出典3Kao, D. (2020). The effects of juiciness in an action RPG. Entertainment Computing, 34, 100359.2Pichlmair, M., & Johansen, M. (2022). Designing game feel: A survey. IEEE Transactions on Games, 14(2), 138–152.
OutBrickは、ひとつの動詞の上に成り立っています。ブロックをスワイプすると、指を離したところまで進むか、押しつけたとなりのブロックと入れ替わる。この動作は1回のプレイで何百回も起きるので、その手ざわりはどんなお祝いの演出よりも大切です。スライドは決してプレイヤーを待たせないくらい速く、それでいて、ブロックがどこへ向かうのかが着く前に見えるくらいわかりやすくなければなりません。「視差効果を減らす」はあらゆる場面で尊重しているので、エフェクトを抑えてもステージは読みとれます。大きな見せ場はクリアの瞬間のもの。そこでは、ブロックのなかまたちがそれぞれ自分だけの勝利ポーズを見せてくれます。
短いプレイでも満足できるのは、手ざわりのおかげでもあります。すっきりした操作にすっきりした反応が返ってくること自体が、小さなごほうびなのです。これについては2分のパズルがしっかりリセットになる理由で掘り下げています。自分の感覚を試したいなら、ブラウザでステージを遊んで、ブロックが止まる瞬間に注目してみてください。同じ抑制はテトリスにも通じていて、その楽しさの多くは派手さではなくリズムから生まれています。音が同じ感覚にどう貢献するかは音のフィードバックとプレイヤー体験の記事を、ゲームを慌ただしくではなく心安らぐものにしている要素についてはパズルゲームを本当に落ち着いたものにするものをご覧ください。
カテゴリーとタグ
よくある質問
役に立つ答えをいくつか
ゲームデザインでいう「ジュース」とは何ですか?
ジュースとは、プレイヤーがすでに起きたとわかっていることを補強する追加のフィードバックです。画面の揺れ、パーティクル、音、振動、弾むようなアニメーションなどがあります。ルールは変えませんが、操作の感じ方を変えます。
ジューシーなフィードバックでゲームは良くなりますか?
ある程度までは良くなります。3,018人のプレイヤーを対象にした研究では、ジュースが中または高のバージョンが、プレイ時間、プレイヤー体験、動機づけ、成績のすべてで、ジュースなしと極端なジュースの両方を上回りました。
ゲームフィールとジュースはどう違うのですか?
ゲームフィールは、ゲームを操作しているときの一瞬一瞬の感覚全体のことです。ジュースはその材料のひとつで、ほかにも物体の動きのチューニングや、プレイヤーの意図どおりにゲームが動くよう操作を整えるストリームライニングがあります。
OutBrickでアニメーションを抑えることはできますか?
はい。OutBrickはシステムの「視差効果を減らす」設定をあらゆる場面で尊重しており、エフェクトを抑えてもステージは読みとりやすいままです。
APA 7
参考文献
参考文献は原語のまま記載しています。出典が研究ではなく、スタジオ自身の歴史や報道記事である場合は、本文の該当箇所でその旨を明記しています。
- Hicks, K., Gerling, K., Dickinson, P., & Vanden Abeele, V. (2019). Juicy game design: Understanding the impact of visual embellishments on player experience. Proceedings of the Annual Symposium on Computer-Human Interaction in Play, 185–197. doi.org/10.1145/3311350.3347171(新しいタブで開きます)
- Pichlmair, M., & Johansen, M. (2022). Designing game feel: A survey. IEEE Transactions on Games, 14(2), 138–152. doi.org/10.1109/tg.2021.3072241(新しいタブで開きます)
- Kao, D. (2020). The effects of juiciness in an action RPG. Entertainment Computing, 34, 100359. doi.org/10.1016/j.entcom.2020.100359(新しいタブで開きます)
- Singhal, T., & Schneider, O. (2021). Juicy haptic design: Vibrotactile embellishments can improve player experience in games. Proceedings of the 2021 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, 1–11. doi.org/10.1145/3411764.3445463(新しいタブで開きます)
- Meiners, A.-L., Reich, D., Hicks, K., Alexandrovsky, D., & Gerling, K. (2025). Lushness in game design: The role of non-interactive visual embellishments in player experience. Proceedings of the 20th International Conference on the Foundations of Digital Games, 1–11. doi.org/10.1145/3723498.3723720(新しいタブで開きます)



