片手で遊べるiPhoneゲーム:運動機能に配慮したデザイン
タッチスクリーンと運動障害の研究からわかった、ボタンの大きさ、ジェスチャー、誤操作のこと。片手で遊びやすくなるiPhoneの設定も紹介します。

片手でゲームを遊ぶ人はたくさんいます。障害やけが、手のふるえのために、いつも片手の人もいます。それよりずっと多くの人が、ときどき片手で遊んでいます。赤ちゃんを抱いているとき、電車で立っているとき、横向きに寝転んでいるとき。そんな状況でも遊べるゲームは、誰にとっても遊びやすいゲームです。この記事では、タッチスクリーンと運動障害についての研究でわかったこと、それがゲームのつくり方にとって何を意味するか、そして今日から使えるiPhoneの設定を紹介します。
Anthony、Kim、Findlaterは、少し変わった方法でこの問題に取り組みました。身体障害のある人が、ふつうのスマートフォンやタブレットを使う自分の姿を撮ってYouTubeに投稿した187本の動画を分析したのです。動画には、指の関節やスタイラス、体のほかの部分を使ったり、安定させるために画面の縁に手を置いたりと、自分なりの工夫でうまく使いこなす人々が映っていました。タッチスクリーンは、力を与えてくれるものとしてよく語られていました。同時に、くり返し起きる問題も見えてきました。意図しないタッチ、小さすぎて押せないボタン、うまく行えないジェスチャーです。
Findlaterらによる統制された実験室での研究は、これを数字で示しました。上半身に運動障害のある16人を含む32人を対象に、タッチスクリーンとマウスを比較したのです。全体ではタッチスクリーンのほうが速かったものの、タッチスクリーンのほうがエラーが少なかったのは障害のない参加者だけでした。運動障害のある参加者は、タッチスクリーンではマウスの3倍のタップエラーを起こし、意図しないタッチもよく見られました。著者たちは、こうしたユーザー向けの推奨最小タッチターゲットを18ミリ以上に更新しました。これは、ほとんどのスマートフォンのボタンよりかなり大きいサイズです。
出典1Anthony, L., Kim, Y., & Findlater, L. (2013). Analyzing user-generated YouTube videos to understand touchscreen use by people with motor impairments. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1223–1232). ACM.2Findlater, L., Moffatt, K., Froehlich, J. E., Malu, M., & Zhang, J. (2017). Comparing touchscreen and mouse input performance by people with and without upper body motor impairments. In Proceedings of the 2017 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 6056–6061). ACM.
障害がなくても、片手で使うとルールが変わります。Parhi、Karlson、Bedersonは小さなタッチスクリーンでの親指の使い方を研究し、単発のタップでは約9.2ミリ、連続したタップでは約7.6ミリのターゲットがあれば、速さや正確さが落ちないことを見いだしました。それより小さいとエラーが増えました。大きさと同じくらい大切なのが、届くかどうかです。大きなスマートフォンでは、持っている手の親指でもっともタップしにくいのは反対側の上の角ですが、そこはまさに多くのゲームが一時停止や設定のボタンを置く場所です。
Trewin、Swart、Pettickは、手先の動きに障害のある人とスマートフォンを研究し、スマートフォンは便利で使えるものの、タブレットにはボタンが大きく、面が安定しているといった確かな利点があることを見いだしました。また、気まずい点にも気づきました。アクセシビリティ機能の中には、設定して使うのにとても器用さを求めるものがあり、多くの参加者が使えなかったのです。オンにするのが難しいアクセシビリティは、あまりアクセシブルとはいえません。
出典3Parhi, P., Karlson, A. K., & Bederson, B. B. (2006). Target size study for one-handed thumb use on small touchscreen devices. In Proceedings of the 8th Conference on Human-Computer Interaction with Mobile Devices and Services (pp. 203–210). ACM.4Trewin, S., Swart, C., & Pettick, D. (2013). Physical accessibility of touchscreen smartphones. In Proceedings of the 15th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–8). ACM.
Kimらは運動面のアクセシビリティを評価する基準をつくり、72本のiPadゲームに当てはめました。PorterとKientzは、障害のあるプレイヤーとゲーム業界の人々を調査し、支援技術との非互換がよくある壁であり、開発者には実践的な指針が欠けていることが多いと見いだしました。あわせると、よくある問題は簡単に挙げられます。時間制限や反射神経のテスト、代わりの方法がない複数指のジェスチャー、正確なドラッグ、画面の端にある小さなボタン、そして一度の押し間違いへの厳しいペナルティです。
デザイナーがもっとも見落としがちなのが時間です。手のふるえ、痙縮、疲労は、どれも速く正確な動きを難しくし、カウントダウンはそれを失敗に変えてしまいます。手数の上限は種類の違う制約です。考えることを求めますが、手がそこに届くまでにどれだけかかるかは気にしません。これがゲームを穏やかにする理由についてもパズルゲームがリラックスできる本当の理由で書きました。
- ボタンはプラットフォームの最小サイズを十分に上回り、あいだに余白がある。
- 大切な操作が、上の角だけでなく親指の届く範囲にある。
- すべてのジェスチャーが指1本ででき、速さを求めるジェスチャーがない。
- アンドゥが押しやすい場所にあり、押し間違いをペナルティなしで取り消せる。
- ふだんのプレイにタイマーがなく、メニューに反射神経のテストが隠れていない。
出典5Kim, Y., Sutreja, N., Froehlich, J., & Findlater, L. (2013). Surveying the accessibility of touchscreen games for persons with motor impairments: A preliminary analysis. In Proceedings of the 15th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–2). ACM.6Porter, J. R., & Kientz, J. A. (2013). An empirical study of issues and barriers to mainstream video game accessibility. In Proceedings of the 15th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–8). ACM.
アクセシビリティについての文章の多くは、入力を正しく行うことに注目します。同じくらい大切なのが、入力がうまくいかなかったときに何が起きるかです。プレイヤーによっては、それがよく起きるからです。うっかり触れただけのタッチを確定した一手として扱うゲームは、手のふるえのある人にとって、ひそかに敵意のあるゲームです。直前の一手を簡単に取り消せるゲームは、誰にとってもやさしいゲームです。Webのアクセシビリティガイドラインも、ポインタのジェスチャー(英語)について関連する点を挙げています。複雑なジェスチャーでできることは、シンプルなジェスチャーでもできるようにすべきだ、というものです。
OutBrickの立ち位置はここにあります。ブロックは指1本で動き、スライドは決まった場所への正確なドラッグではなく、短い1回の動きです。時間制限はどこにもありません。各ステージ最初のアンドゥは無料なので、一度スライドを間違えただけでステージを失うことはありません。動かせる手がなくなったステージは無料で自動的にシャッフルされます。Apple WatchではDigital Crownもタッチと同じように使えます。それでも、これで誰もが遊べるゲームになるわけではなく、スライドパズルには方向のあるジェスチャーが必要です。届きにくい操作があれば、アクセシビリティのページから端末と画面を教えてください。その詳細こそが、私たちが修正するための手がかりになります。
これがどれほど多くの人に関わるかも覚えておきたいところです。デザイナーは「状況による障害」という言い方をすることがあります。片腕に子どもを抱いた親、手すりにつかまった通勤客、6週間手首にギプスをしているプレイヤー。誰も自分を障害者とは思っていませんが、全員がまったく同じ工夫の恩恵を受けます。ずっと手のふるえがあるプレイヤーのためにデザインすれば、車両じゅうの人が片手で遊べるゲームになります。
Appleの運動機能に関するアクセシビリティ設定は「設定」>「アクセシビリティ」>「タッチ」にあり、ゲームに合うものがいくつかあります。どれもすべてのアプリの指への反応を変えるので、1つずつ試すのがおすすめです。とくにゲームでは、設定をオンにしても正しく動くか確かめてください。よくできたゲームなら気づきもしないはずです。Apple Watchにも独自のオプションがあり、小さな画面についてはApple Watchのパズルゲームで取り上げています。
- 「簡易アクセス」を使うと、画面下端を下にスワイプすることで、画面の上部が親指の届くところまで下りてきます。
- 「タッチ調整」では、くり返しのタッチを無視したり、少し長く触れたときだけタッチとして扱ったり、指が最初または最後に触れた位置を使ったりできます。
- 「AssistiveTouch」は画面上にフローティングメニューを表示し、複数指のジェスチャーや物理ボタンの代わりに使えます。
- 「背面タップ」は、iPhoneの背面をダブルタップまたはトリプルタップしたときのショートカットを設定できます。
- 「音声コントロール」と「スイッチコントロール」を使えば、まったく触れずにiPhoneを操作できます。ただし、テンポの速いゲームとはあまり相性がよくありません。
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よくある質問
役に立つ答えをいくつか
片手で遊びやすいモバイルゲームの条件は何ですか?
親指の届く範囲にある大きく余白のあるボタン、指1本でできるジェスチャー、タイマーや反射神経のテストがないこと、そして押し間違いを簡単に取り消せることです。
運動障害のある人向けのタッチターゲットはどれくらいの大きさが必要ですか?
Findlaterらの実験室での研究は、上半身に運動障害のあるユーザーには18ミリ以上を推奨しています。一般的なスマートフォンのボタンよりかなり大きいサイズです。
ゲームの運動面のアクセシビリティに役立つiPhoneの設定は?
「設定」>「アクセシビリティ」>「タッチ」にある「簡易アクセス」「タッチ調整」「AssistiveTouch」「背面タップ」です。「音声コントロール」と「スイッチコントロール」を使えば、触れずにiPhoneを操作できます。
OutBrickは片手で遊べますか?
はい。ブロックは指1本の1回のスライドで動き、時間制限は一切なく、各ステージ最初のアンドゥは無料なので、スライドを間違えてもステージを失いません。ブラウザでステージを遊んでみることもできます。
APA 7
参考文献
参考文献は原語のまま記載しています。出典が研究ではなく、スタジオ自身の歴史や報道記事である場合は、本文の該当箇所でその旨を明記しています。
- Anthony, L., Kim, Y., & Findlater, L. (2013). Analyzing user-generated YouTube videos to understand touchscreen use by people with motor impairments. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1223–1232). ACM. doi.org/10.1145/2470654.2466158(新しいタブで開きます)
- Findlater, L., Moffatt, K., Froehlich, J. E., Malu, M., & Zhang, J. (2017). Comparing touchscreen and mouse input performance by people with and without upper body motor impairments. In Proceedings of the 2017 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 6056–6061). ACM. doi.org/10.1145/3025453.3025603(新しいタブで開きます)
- Parhi, P., Karlson, A. K., & Bederson, B. B. (2006). Target size study for one-handed thumb use on small touchscreen devices. In Proceedings of the 8th Conference on Human-Computer Interaction with Mobile Devices and Services (pp. 203–210). ACM. doi.org/10.1145/1152215.1152260(新しいタブで開きます)
- Trewin, S., Swart, C., & Pettick, D. (2013). Physical accessibility of touchscreen smartphones. In Proceedings of the 15th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–8). ACM. doi.org/10.1145/2513383.2513446(新しいタブで開きます)
- Kim, Y., Sutreja, N., Froehlich, J., & Findlater, L. (2013). Surveying the accessibility of touchscreen games for persons with motor impairments: A preliminary analysis. In Proceedings of the 15th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–2). ACM. doi.org/10.1145/2513383.2513416(新しいタブで開きます)
- Porter, J. R., & Kientz, J. A. (2013). An empirical study of issues and barriers to mainstream video game accessibility. In Proceedings of the 15th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility (pp. 1–8). ACM. doi.org/10.1145/2513383.2513444(新しいタブで開きます)



